今回は、共済会の積立剰余金の解消についてお話を伺います。
――積立金に剰余部分があり、過剰な積立と判断された場合どうしたらよいでしょうか。
2とおり考えられます。
1つは、会費や拠出金を一時的に引き下げまたは停止することで、意図的に赤字構造をつくり、積立金を取り崩す方法です。
会員から見れば負担が軽減するので魅力的に見えるでしょう。
――とはいえ、共済会の収入が減らすことで新たに生まれる課題はないのでしょうか?
あります。仮に剰余部分が消えて積立額が適正になった際に、「来年度から会費や拠出金額を元に戻します」といっても会員や母体事業主が果たして納得するかどうかという問題です。
――確かに、値下げしたものを再度値上げするのは抵抗が大きそうです。
この方法を実施した共済会の事例は多くありますが、値上げができなければ結果的に給付を縮小することになりかねないというリスクがあります。
――将来の値上げ交渉まで考えると、あまり得策とはいえない方法かもしれませんね。
もう1つの方法は、共済会事業の規模を拡大し、支出を増やすことで積立金を減らす方法です。会費や拠出金額は変えません。
――収入に対して支出を増やすので、これも「赤字予算」を組むことになりますね。
そうです。事業規模を拡大する手段として最も簡単なのが慶弔給付額を引き上げることです。
結婚祝金や出産祝金等少子化に関連する給付を対象とするのが適しています。また補助金を増やすこともあります。育児の補助金、介護の補助金、不妊治療の補助金といった補助が対象になります。
――なるほど、そうした慶弔給付額が引き上げられるなら、会員の納得も得られますね。
事業規模拡大の他の手段としては、共済会契約でのサービスを増やすこともあります。例えば、共済会が保険契約者となり新たにGLTD(所得補償保険の一種)を契約するといったケースや、フィットネスクラブを共済会名義で法人契約するということも。さらに福利厚生パッケージを共済会が法人契約するといったことなどがあります。
――どれも会員が喜びそうですね。
仕事と家庭の両立支援、健康支援、多様なニーズへの対応といった、福利厚生のトレンドキーワードを満たすものがよいでしょう。また、積立金額が適正になったらその時点でトレンドにない福利厚生を縮小して支出を減らし収支を均衡させればよいでしょう。
慎重な理事会では、積立金額が適正になった際の対応まで予め見据えておかないと意思決定できないところもありますが、「積立金額が適正となった後は、その時点での福利厚生環境や労働環境を踏まえて再度検討する」というように、柔軟な扱いができるようにしておくのが理想的です。
――これなら単なる給付額・補助額の縮小ではなく、福利厚生の見直しとなるので共済会員の理解も得られそうですね。
過剰な積立金は、一般的には放置されることが多いのです。
先に述べたように積立金額が適正か判断するのが難しいことと、共済会の存在感が低下している場合、誰もそれを言い出さないことがほとんどですから。
――先送りにされてしまっているんですね。もし剰余金があれば見直しのきっかけになるのに。
過剰積立金問題に取り組み、それを明らかにすることは、新たな福利厚生の原資の発見につながる可能性があります。やりたい福利厚生があっても原資がなく実現できないことは多いですが、過剰な積立金があればその原資に充当することだってできるんですから。
――放置されて使い道のなかった剰余金を有効に使えますね。
企業が新たに育児支援・介護支援を強化したいと考えていたケースがあったのですが、原資がなくて断念しそうだったところ、「共済会はありますか」というこちらの問いから共済会の積立金を活用することに気づき、共済会事業で育児サービス利用時の補助金や介護サービス利用時の補助金制度を開始することができた事例もあります。
――共済会の過剰積立金がそうした新たな還元につながるなら、今の積立金が適正か、ぜひ積極的に見直しを図っていきたいところですね。