前回は共済会が抱える以下の課題にふれました。
1 共済会の収入が支出を大きく上回り、毎年剰余金が発生し、それが積み上がって必要以上の積立金がある。
2 逆に支出が収入を上回り、共済会財政を逼迫している。
3 共済会の存在意義が見失われ、職域内の福利厚生の一翼を担っているにもかかわらず共済会の存在感が薄れている。
――「1」については、前回詳しくお伺いしました。このご時世において最大24.2倍もの剰余金を抱える団体があったというは大変な驚きでした。
さて、今回はその過剰な積立金の解消について更に詳しくお伺いしてみたいと思います。
共済会は、将来給付するであろう退会餞別金の引当や大規模災害の際の災害見舞金の支払いに備えることが必要ということでした。
――単に積立金額だけを見ても、それが余剰かどうか判断するのは難しいですよね。なにか判断の目安になるようなものはありますか?
必要な積立額を算出できれば、余剰かどうか判断が可能になります。
――当たり前のことのように聞こえますが、具体的にはどのような方法で算出するのでしょうか?
まず退会餞別金の要引当額の算出は、今いる会員が今期末で退会した場合に支給される退会餞別金の合計額をもって引当額とすればよいでしょう。
――会員の納得も得やすそうです。
しかし難しいのは災害見舞金の給付額の予測です。大規模災害となりますので、水害は除いて大地震の災害を前提とします。もちろん、地方自治体の職員互助会のように特定の地域に所在する場合は水害の被害予測も必要です。
――大地震の被害の見積もりは、被害の規模が読めないので難しいですね。
そこで首都圏に会員が集中している共済会では、「都心南部直下型地震」の発生を想定して政府が試算した被害想定を使用します。
――どのような数字になるのですか?
予測死亡者数は最大で23,000人、予測家屋倒壊数は最大で61万棟とされています。
――あらめて伺うと、恐ろしい数字です。
気象条件や時間帯によって被害規模は変わりますが、これを用いて共済会の死亡弔慰金と災害見舞金の給付件数を推計します。
死亡弔慰金給付件数=予測死亡者数×(都心に住む共済会会員数+家族数)÷被災エリアの人口)
災害見舞金給付件数=予測家屋倒壊数×(都心に住む共済会会員数÷被災エリアの家屋数)
といった形で比率を用いて共済会内での被害を予測します。
――かなり明確な基準になりますね。
ここで重要なのは,万一震災が発生した際に積立金が不足することのないよう高めの数値を算出することです。
――やり方によっていろんな試算値が出そうです。いざという時に本当に費用を賄うことができるのでしょうか。
そうなんです。そのため高めの数値を出すことで積立金の最高準備額を求めます。
――南海トラフ沖地震の場合も、同様に被害想定から割り出すのでしょうか?
南海トラフ沖地震は太平洋沿岸での被害が想定されていて、範囲が広く、また海岸沿いに細長く被害が偏ることになるため、公表されている都道府県別の被害想定を全国に分布する共済会員に割り付けることが難しく、この方法では皆が納得できる試算は難しいです。
――となると、別の方法で算出するということでしょうか?
積立金の中で本当の意味での剰余金額を算出することが目的であり、これ以外にも試算の方法はあります。
――同じ大地震であっても被害範囲の広さなどによって試算の方法も変わってくるんですね。退会餞別金や災害見舞金がない共済会は、積立金自体がほぼ剰余金というケースが多いのでしょうか。
積立金は毎年の慶弔給付の支給件数のブレを吸収する役割もあります。共済会が主催する周年事業の費用を積み立てているところもありますので、実態を見て判断することになります。
――何事においてもそうですが、想定と実態とを比較して、定期的にメンテナンスすることが重要ですね。