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【特別対談】大手通信販売会社フェリシモとみる、hope for立ち上げの背景と、災害を通じてつながる人の想いと新しい未来。

富永 この度フェリシモさんの100%出資子会社「株式会社hope for」のCVC(コ―ポレートベンチャーキャピタル)から当社へご出資いただきました。hope forさんの設立が北海道の厚真町というのはどういった背景があるんですか?

三浦 北海道厚真町との関わりは2017年からなんです。総務省の『地域おこし企業人(現:地域活性化起業人制度)』というプログラムを活用して、神戸と厚真町とを行き来しながら3年間ほど私自身が厚真町の役場に出向していたんです。

富永 そうなんですね。北海道の厚真町といえば、数年前に大きな震災がありましたよね。甚大な被害があったのを覚えています。

三浦 2018年9月6日に北海道胆振東部地震が起きました。私も厚真町にいて被災したんです。被災当時は役場の物資配給のチームとして避難所に配給品を届けるなど、支援活動をしていました。ただ被災地のこれからに何ができるかを考えたときに、『ここから次の時代の新しい産業をつくる』ということが、これからの未来に希望を届けられるんじゃないかと考えて、株式会社hope forを厚真町に立ち上げたんです。

hope for立ち上げについて語る三浦さん

富永 hope forさんの立ち上げは復興支援活動の一環でもあったんですね。

三浦 でもそれだけじゃないんです。震災時に家が全壊してしまった方がいるんですが、そんな大変な状況でも「ここでがんばります!」と、強い希望を持っていたんです。未来に希望を持つことが次の一歩を踏み出す大きな原動力になると実感した瞬間でした。どんな状況にあっても、人は未来を想像し、希望を創造できるんだということを目の当たりにしたのもhope forを厚真町に設立した大きな理由です。

富永 被災して大変なときなのに、そうした想いが復興への道につながるんでしょうね。でも実際、復興へ向けて多くの課題があったんじゃないですか?

三浦 たくさんありましたね。でもその課題を負の遺産として継いでしまうのではなく、事業を通じて未来への贈り物に変えることもできます。たとえばhope forの立ち上げから4か月後に出資した企業は、厚真町に30年以上放置されたゴルフ場跡地に、震災で流れ出た森の土を再利用して宿泊滞在型の牧場を作ろうとしています。震災時に発生する土砂の処理はとても大きな課題のひとつなんですが、その土を利用して厚真町の新たな活性の場へとつなげているんです。

富永 まさに負の遺産同士を掛け算した素晴らしいアイデアですね。

震災時の人のつながりを話す富永

三浦 おもしろいですよね。そのゴルフ場跡地は粘土質だったり、地盤が露出したりして牧草栽培には適さない土地だったんですが、この事業がいま厚真町の希望になりつつあるんですよ。そこに惹きつけられて私たちの出資先や、ほかの出資先も集まって、企業の交流が生まれています。多くの人がつながっていくことを日々実感しているところです。

富永 震災を乗り越えて復興していくには、そうした人のつながりが欠かせませんよね。フェリシモさんの本社がある神戸も震災から復興を遂げた街ですから、いろいろ想いが重なるところもありますよね。

三浦 そうですね。阪神・淡路大震災のときにもいろんな人のつながりがありました。もともとフェリシモの創業は大阪なんですが、神戸に移転することが決まった後に震災が起きたんです。移転するかどうか話し合いを重ねた結果、「近代洋服発祥の地・神戸を守っていこう!」と、移転を決めた経緯があります。移転してからは、ありがたいことにお客様から「何かできることはありませんか?」とたくさんのお手紙をいただきました。

フェリシモ社のオフィス

富永 大きな決断ですね。でもその移転によって人の温かい想いや、支えあう気持ちに触れることができたと。

三浦 はい。私たちも神戸でボランティア活動をしていたんですが、たとえ壊れてしまった建物は修復できなくても、人の心の復興につながることができないかと。そこで『神戸から未来へ、経験と言葉の贈り物』をコンセプトとした講演を開催することにしたんです。

富永 それが『神戸学校』ですね!

三浦 そうです。毎月1回、著名な方に来ていただいて勉強会をしているんです。その界隈のスペシャリストの講演ですから、本当にワクワクする話だったり、希望を持てるような話だったりで前向きな気持ちになれるんですよね。元々は社員にむけた勉強会だったのですが、神戸の方にもぜひこの心が躍動する前向きな気持ちをと考え、1997年に一般公開したんです。2022年で300回を迎えました。

富永 300回ですか!随分な回数になりますね。神戸の方たちって明るくて前向きな印象があるんですが、そうした取り組みの積み重ねもあったんですね。

三浦 この神戸学校の参加費は全額、神戸の震災遺児の支援、2011年以降は東日本大震災遺児への支援に活用されています。

富永 神戸から東日本へと、復興の輪がつながっているんですね。

防災について語り合う三浦さんと富永

三浦 神戸学校の出会いがきっかけで、多くの協業も生まれました。ちょうどいまも新しい防災プロジェクトを進めているところなんですよ。防災グッズの一部に基金を付けて、もしものときに誰かの防災を担う共助の仕組みを作りたくて。企業同士をつなげて、防災のバリューチェーンができればと思っています。

富永 防災に対する取り組みは、これまでの経験や体験が活かされる部分がありますよね。Frichもそうした震災の経験の声から、災害時のペットの避難サポートを作っています。被災したときにペットを避難所へ連れて行けないこともあるので、飼い主さんやペットができるだけ一緒に過ごせる環境を整えられないかと。大切な家族ですから。

三浦 素晴らしいですね。Frichさんの仕組みは、小さな願いを叶えるコミュニティを生み出していけると思うんです。「こうできたらいいよね」、「こうできたら安心だよね」という想いを、お客様同士がどんどん拠出していけるような。自分も大切な相手も備えられる共済のあり方や、お客様自身がそうした支えあいの機会を作れるような仕組みですよね。

笑顔で対談を終える三浦さんと富永

富永 人のコミュニティが持つ可能性って、企業同士の協業に近いものがあると思うんですよ。人と人とがつながって、これまでできなかった考えや理解が生まれる。防災に限らず、新しい支えあいの可能性がどんどん広がるんです。

三浦 つながることでたくさんの願いが増えれば、いろんなきっかけが生まれますよね。希薄になりがちな現代だからこそ、きっとこうしたつながりが明るい未来を築いていくんでしょうね。

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